淡々と

行動範囲が狭い主婦の静かな日々のあれこれ。家族のしあわせ、シンプルライフ。

粘菌

風邪から立ち直り、好きな味のご飯を作ったりできて嬉しい、

先日風邪でぼーっとした頭のままテレビをつけたら、NHKの「爆笑問題のニッポンの教養」が始まった。「粘菌」について。粘菌とは動物でも植物でもなく菌類でもない単細胞生物らしい。これを研究している北海道大学の中垣先生を取材していたのだが、この先生も研究テーマも実に興味深かった。イグ・ノーベル賞というユーモアにあふれた研究に贈られる「もう一つのノーベル賞」を受賞したそうだ。

この愛すべき粘菌の餌はオートミール。オーガニックなオートミールがお気に入りらしく、餌を与え快適な環境が整うと身体が増殖する。逆に好ましくない環境におかれると(光など)増殖は止まる。この特性に着眼し幾つかの実験を試みていたのだが、単細胞で脳をもたないはずの粘菌なのに迷路の実験では最短経路で出口の餌まで到達するのだ。また関東地方の地図の主要都市に餌を置き、粘菌の嫌う光を川や湖や海に当てたり標高に合わせて光を強弱に変化させるなどして関東地方の地形特性を作ったところ、粘菌は東京を中心にJRの鉄道網とほぼ相似する増殖を見せたのだ。粘菌は常に最も合理的な経路を示す。そしてJRの既存の鉄道網は、かなり合理的なものであると言えるそうだ。

中垣先生曰く、人間ももしかしたら脳で考えているのではなく身体で考え動いているのではないか、と。ロボットは人工知能で弾道計算をして動きを決定しているが、イチローがボールを追う時には頭で弾道計算はしない。弾道計算などしていてはボールを取ることはできないだろう。身体が弾道を追い、追いつき、ボールを取るのだ。

先生は「あまり余計なことはやらない方が良い」とも仰っていた。人間は何か問題が起こるとそれに対して悪いところを直そうと考えるが、その結果良い点までも変えてしまうことがあるのでは、と。結局やらなかった方が良かったということが日常よくある。地球の歴史、宇宙についてもいえることで、自然の流れには人間は抗うことはできない、というようなことを話していた。

風邪でうまく頭が回っていなかったけど、大体そんな感じの話だったと思う。都合のよい結果を導くよう実験に何かしら作為的な設定をしているのでは?と軽く疑うくらい、合理的な行動様式の粘菌には驚くばかり。すっかり粘菌の虜になってしまった。

息子のような人を捕まえて「単細胞」などとこれからは言えなくなる。中垣先生の「下手な考え休むに似たり」論は個人レベルで少しホッとした。でも「余計なことをやらない」ことを選択するのも決断の一つなんだろうし。結果論に過ぎないのかな。

中垣先生は雄弁で哲学者のようだった。「生物と無生物のあいだ」の福岡伸一先生の次は中垣先生だな。粘菌に関する一般向けの本が出たら是非読んでみたい。

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